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2022年3月に鑑賞したこの映画の感想を、書く時間が取れずにいました。軽いロマンティックコメディのように見せて、97年の中国返還から2010年代の民主化運動に至るまで激動の四半世紀を経た香港への、未来への憂いを端々に感じる作品でもありました。だいぶ記憶が薄れていますが、「縁路はるばる」というタイトルに変わって東京で上映会が開催されると聞いて、あらためてちゃんと書き残しておきたいと思いました。
香港の中心地・セントラル(中環)のIT業界で働く主人公のハウ。会社の同僚、高校時代の憧れの相手、大学の同窓生…とデートを重ねてますが、アラサー独身男性のロマコメ定石(?)として、フラれたり振り回されたりを繰り返します。
面白いのは彼のデートの相手たちが、セントラルから離れた場所に住んでいるという設定。ハウが地図アプリを頼りに各地を訪ねていく様子が『僻地へと向かう』というタイトルになっています。
「下白泥」は、香港で最高の夕日を眺めを誇るビーチ。水上生活を営む漁師コミュニティが残っているという「大澳」、300年の歴史を持つ客家の村「荔枝窩」、小さな離島「長洲島」など、香港で生まれ育ったハウも初めて訪れる”僻地”に観客の私たちも連れて行かれて、香港の美しさ、複雑さ、奥深さを一緒に体験します。
鑑賞後もこの作品が心に残り続け、2022年の年間ベスト10のうちの1本に選びました。一昨年のアジアン映画祭で見た『手巻き煙草(Hand Rolled Cigarette、手捲煙)』のようなノワール映画、『レイジング・ファイア』のようなアクション映画も含め、多彩な才能が多様な作品を生み出してきた香港の映画界は、政府の規制とコロナ禍で今後どうなっていくのでしょうか。2021年の本作は、映画ファンにとってひとつの希望だと思います。
★参考:作品中に登場したエリア
★東京外国語大学 TUFS Cinema
香港映画『縁路はるばる』上映会(2023年1月9日)