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緊急事態宣言の影響で大阪府下の映画館がほぼ休館になってしまいましたね。映画館は閉めてくれ。図書館も本屋も美術館も閉めてくれ。でもオリンピックは絶賛準備中ですってなんやのそれ(怒)。
去年の4月も緊急事態宣言下だったことを思い返せば(この1年間何やってたんだよ政府!ってなるけど)大阪アジアン映画祭って2年連続ギリギリのタイミングでフィジカル開催できてますね、強運じゃないですか。(その割には運営にモヤりますが、それはまた。)
韓国映画、日本映画ときて、3本目に見たのは香港映画の『手巻き煙草』。本映画祭での鑑賞はこれが最後になりましたが、ザ・香港ノワールを堪能できました。
公式の解説によると、主人公は「元・駐香港イギリス軍上官」、現在は密輸なんかに手を出して稼いでいる男という設定なんですが、この「元・駐香港イギリス軍」の歴史的背景がいまいちわからない。調べてもウィキペディアのようなソースしかなく、1997年の香港返還時に解体されたものの、そこに所属していたキャリアがどんな意味を持つのかといった情報にはたどり着けず。というのも、主人公も彼の元同僚も、退役後、余裕のある生活を送っているように見えず、何がしかの事情があるのかと気になりました。
その主人公が暮らす重慶マンションに、ひとりの南アジア系(インド系)の男が、ギャングに追われて逃げ込んでくるところからメイン・ストーリーが始まります。逃げる男と匿う男、社会のはみ出し者同士のバディ・ムービー。互いに探りあいながらも、最後は擬似兄弟的関係になってきて…。アジアフォーカス・福岡国際映画祭の『犯罪現場』の感想でも書いたとおり、アジア映画の魅力にハマるきっかけが90年代の中国映画・香港映画だった私にとって、雑然とした市場や重慶マンションの中を走り抜ける逃亡シーンだけで胸がいっぱい。
重慶マンション(重慶大厦)というのは実在する巨大雑居ビルで、ウォン・カーワァイ監督『恋する惑星(原題:重慶森林)』にも登場します。ビルのオープン当初から、イギリスの元植民地である南アジア人の商店が少なからずあったそう。『恋する惑星』でも「南アジア人で溢れかえる」ビルの様子が出てきたとのことですが、全く記憶にないわぁ(笑)。
ジャンルとしてはクライム&アクションですが、移民の事情あり、大人の(ややもどかしい)恋愛描写あり、何と言っても悪役側のギャングの造形が超ヤバくて(本来の意味での「ヤバい」)、大好きな要素てんこ盛りの娯楽映画でした。これで「駐香港イギリス軍」の事情を知っていればさらに深く理解できたのかな。チャン・キンロン監督いわく「かつての香港にあった物事」や「世代間の継承」を描きたかったそう(メッセージ動画、必見です)。中華圏アカデミー賞と言われる第57回金馬奨では、長編作品賞、新人監督賞、主演男優賞等にノミネート。惜しくも受賞にはいたりませんでしたが、活躍を応援したい作り手です。