第16回大阪アジアン映画祭(1)三姉妹|Three Sisters


大阪に住んでいながら大阪アジアン映画祭のことを書くのは初めてです。大阪へ引っ越してきたばかりの頃に映画祭ボランティアをしたことがあり、それがあまりいい思い出じゃなかったこと、その後も一観客として毎年参加しているものの「なんだかなあ」と感じることがあり、何かを書き残しておきたいという気持ちにならなかった。

例年、3月前半の仕事の繁忙期(かつ、確定申告期)に重なるのと、地元開催であるがゆえに、いつもの生活リズムの中で見られるものを見るスタイルになり「映画祭に行ったぞ!」という特別感がさほどない(笑)。それでも、こういうイベントが身近にあるのって本当にありがたいですね。

昨年は初めての緊急事態宣言前のギリギリのタイミングで開催されていましたが、今年も大阪府下には宣言発令中の状況で実施されました。2年続いてゲスト招聘はなしですが、コロナ禍でも途切れずにリアル開催できるって、運に恵まれている映画祭なのではなでしょうか。知らんけど。

そういうわけで鑑賞した3本の作品について、少しずつ感想を書き留めておきます。

韓国映画の『三姉妹』。本国でも今年(2021年)の1月に公開されたばかりの作品のようです。全く性格が異なる三姉妹が、長女は貧困と病気を、次女は破綻した結婚生活を、三女は社会生活に不適合の自分を抱えて生きている。幼少期、特に長女が父親から酷い虐待を受けており、次女と三女はそれを見ながら育ったという過去があります。

三姉妹それぞれの人物像や生活環境は見ていて気持ちのいいものではなく、イライラする、しんどいという映画評(感想)も目にしました。確かに共感はしづらいですが、自分で自分の怒りや悲しみを持て余しているような彼女たちの姿を見ていると、自分で自分を傷つけなくていいよと、背中をそっとさすりたくなる。劇中の回想場面で、幼い頃の彼女たちが、近所の人に助けを求めたのに助けてもらえなかった、それどころか、親不孝するもんじゃないと諭されたり、大人の男性から性的な目で見られたりする描写はキツかったな。親から子への暴力(虐待)が問題として認識されていなかった時代。日本でも、20〜25年前ぐらいまではそうでした。

次女役は大好きなムン・ソリさん(『ペパーミント・キャンディ』『オアシス』、最近では『リトル・フォレスト 春夏秋冬』)。長女役のキム・ソンヨンさんは『マルモイ ことばあつめ』やドラマ『愛の不時着』(見てないけど)にも出演、三女役チャン・ユンジュさんはもともとモデルで、今回かなりのイメージチェンジ。

中年女性を主役に据えて映画が作られ、こういうテーマが語られる。そのこと自体を心から祝福したいです。

『三姉妹』
2020年/韓国
監督:イ・スンウォン
予告編動画はこちら
◎参考
Kstyle|ムン・ソリ&キム・ソニョン&チャン・ユンジュ主演、映画「三姉妹」来年1月に韓国で公開決定
スポーツソウル|韓国映画『三姉妹』、異なる性格の三姉妹が紡いできたそれぞれの過去「家族問題をより深く覗いた」