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フィクションですがドキュメンタリータッチで、説明らしい描写はありません。主人公がどこから来たのか、名前も、さっき「青年」と書いたけれど年齢も定かではなく。大きなビルの夜間警備員の仕事をしていて、どこかの地階にある部屋で、誰かと共同生活を営む様子が淡々と映し出されます。誰かと交わったり、楽しげに会話する様子はありません。何の事件も起こりません(笑)。
急速な近代化に取り残された人たちの物語と言ってしまいそうになるけれど、主人公はその生活スタイルに順応し、一定のリズムを見つけて暮らしているようにも見える。金銭的にも環境的にも裕福ではないが、単純に孤独で不幸と見ることには躊躇がある。一方、彼の職場であるピカピカのビルと住まいである暗く狭い部屋など、現実にある格差は明確に描き分けられており、彼は彼なりに幸せだということも欺瞞に感じるのです。
本作は2019年のベルリン映画祭で世界初上映されていますが、感染症が世界を覆い尽くした2020年、巨大都市の機能を維持する意味においてエッセンシャルワーカーと言える主人公のような人たちは今どうされているのでしょうか。こういった作品こそ、監督(ゲスト)とのQ&Aがとても興味深い時間になると思いますが、残念ながら今回はなく。その代わり、監督のメッセージ動画を映画祭側が用意してくれていました。「映画は映画館で見られるべきと信じてやみません。映画祭もオンラインだけではなく実際の『場』で行われるべきでしょう(I still belive that a cinema should be watched in a cinema, and a film festival should be connected to the audience physically, not just online)」というリンフォン監督の言葉には120%共感です。