第10回カンボジア国際映画祭(7)Last Night I Saw You Smiling|昨夜、あなたが微笑んでいた

ショッピングモール内のシネコン(Legend Cinema City Mall)で、映画祭2本目の作品の入場を待つ間、ちょうど映画祭ブースの後ろにベンチがあったので、そこへ腰掛けて受付の様子を眺めていました。少しずつお客さんが集まって、若い人の姿もあってなんだか嬉しい。平日だし、みんな学校や仕事が終わってから映画を見に来ているんだろうな。

劇場の中はこんな感じ。座席はなんとリクライニングシートでした。



上映前に映画祭のスタッフさんが、英語とカンボジア語で挨拶。監督も来場していて、ちょこっと挨拶、拍手が起こります。(写真ブレブレですが…。)



中低所得者向けの公営集合住宅として1963年に建造された「白い団地/ホワイトビルディング(White Building)」。クメール・ルージュによる都市住民の強制移住をはじめ、カンボジアの激動の現代史を見つめてきたこの建物が、2017年に取り壊されることになります。



自身もそこで生まれ育ったという監督が、住民の立ち退き、建物の取り壊しという「白い団地の最後の日々」をカメラに収めたドキュメンタリー。



相当年季の入った建物に、たくさんの家族が暮らしている。身なりや家財道具の様子から、富裕層ではないもよう。荷造りのことで言い合う家族、裸のまま廊下を走り回る子ども、歌をうたう女性。クローゼットにキャラクターのシールが貼られていて、庶民の生活風景って国が違っても結構似てるものだなぁと、ただ微笑ましく興味深く見ていました。

実はこの映画を見たときには、クメール・ルージュによる支配、ポル・ポト政権下のカンボジアでどんなことが起きたのか、大勢の国民が殺されたという以外、詳しいことをきちんと知らなかったのです。恥ずかしながら。

翌日には帰国で、飛行機の出発が夕方だったので、それまでどうやって過ごそうかな、王宮や国立博物館を見にいこうかなと考えていたのですが、やっぱり気持ちが変わって、トゥール・スレン虐殺博物館とキリング・フィールドに行きました。日本に帰ってからも、図書館でカンボジア関連の本を借りて読んだり、たまたまBSで放映していた『キリング・フィールド』を見たりして、当時のプノンペンの住民が、着の身着のままで街を追い出され、強制移住、強制労働、家族離散、虐殺など壮絶な経験をしたことを学びました。映画の中にも、そのときのことを回想する人が出てきます。

この作品はすでにロッテルダム国際映画祭東京フィルメックスでも上映されたそうで、ネットで検索すると日本語、英語両方で情報が見つかります。2019年には監督が来日もしてたみたい。

白い団地(ホワイトビルディング)に関しては、カンボジアの歴史的建造物という扱いで、建築やアートの視点からの情報もたくさんありました。

いつかカンボジアを再訪する機会に恵まれたら、近代建築巡りをしてみたい、かも。

Last Night I Saw You Smiling
2019
Cambodia, France
Director: NEANG Kavich
予告編

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ホワイトビルディング育ちのカンボジア人監督、フィルメックスで国の現状語る|映画ナタリー

Kavich Neang on Last Night I Saw You Smiling | Art of the Real 2019(
Film at Lincoln Center)

◎ 参考
市民の暮らし営まれてきた集合住宅、取り壊しへ プノンペン|AFP

(特派員メモ)消える「白い団地」@カンボジア・プノンペン|朝日新聞

WHITE BUILDING