第24回釜山国際映画祭(5)オルジャスの白い馬

第24回釜山国際映画祭のオープニング作品は、カザフスタンと日本の合作『The Horse Thieves.  Roads of Time』。すでに『オルジャスの白い馬』という邦題で、2020年1月に日本で一般公開されることが決定しています。

物語の舞台は、中央アジアに位置するカザフスタンの、都市部からずいぶん離れているように見える(後半の森山未來くんの登場シーンで、彼がバスに揺られてやってくるシーンがあります)小さな集落。小さな、と言ってもそれはコミュニティの規模的な話で、スクリーンに映し出されるのは広大な草原の風景(ちなみに、カザフスタンの総国土面積は世界第9位で、日本の7倍)。映画の冒頭では、村の人々が馬を飼ったりトマトを栽培したりしながら暮らし、子どもたちは川で遊ぶような様子が描かれます。

「The Horse Tieves」というタイトルから想像できるように、馬泥棒の出現により、主人公家族のおだやかな日常が急変するわけですが、日本公開用の予告編を見るとめちゃくちゃネタバレしているので、詳しく知りたい方はぜひこちらをご覧ください(笑)。日本の森山未來くんと、カザフスタンのサマル・イェスリャーモワさん(第71回(2018年)カンヌ国際映画祭で最優秀女優賞受賞)のW主演作という扱いになっていますが、私には父親を突然失った少年の成長物語のように思えました。

予告編動画

この作品の特筆すべきことのひとつが映像の圧倒的な美しさではないでしょうか。撮影を手がけたアジズ・ジャンバキエフ氏(Aziz Zhambakiev)は、2013年のベルリン国際映画祭で銀熊賞(芸術貢献賞)に輝いた人と知って納得。 その時の作品『Harmony Lessons(原題:Uroki Garmonii)は、第14回東京フィルメックスで上映されたそう。

日本にいるとカザフスタンにはあまり馴染みがないと思いますが、歴史的には旧ソ連の国で、地理的にはロシアや中国に接しています。劇中のお葬式の場面で、字幕表記はなかったものの「アッラーフ・アクバル」と唱える(ように聞こえた)シーンがあったんですが、約7割がムスリムとか。女性たちが頭にスカーフを巻いていたのも、それでかな。

『オルジャスの白い馬』の日本公式サイトに載っている、プロダクションノート(竹葉リサ監督の撮影日誌)の説明も、とても参考になります。

The Horse Thieves.  Roads of Time|オルジャスの白い馬
2019
Kazakhstan, Japan
Director:Yerlan Nurmukhambetov, Lisa Takeba

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◎ 参考
第14回東京フィルメックス|『ハーモニー・レッスン』Harmony Lessons/Uroki Germany