第20回全州国際映画祭(10)The Innocent

全州国際映画祭での記念すべき鑑賞第1作目は「The Innocent」。ドイツ語圏のスイスの都市が舞台となった物語です。


主人公のルースは、夫と娘2人と暮らす中年の女性。殺人罪で20年近く投獄されていた(スイスは死刑廃止国)元恋人が出所してくるところから、彼女の生活は少しずつ変調をきたしていきます。

ここに、敬虔なクリスチャンであり、動物実験に関わる神経科学者という主人公の設定が絡み、エクソシズム(悪魔払い)のシーンもあり、現実と妄想のはざまを行ったり来たりするような形で物語が進みます。




字幕の英語が拾いきれず、なかなか付いていけなかったのですが、これ、韓国の人が韓国語の字幕で見ていても、難しかったと思う。


上映後のQ&Aセッションでは、会場からのたくさんの質問(劇中に出てきた教会は実在のものを参考にしたのか、主人公がプールで深く潜っていくシーンの意味、動物実験の猿は何のメタファー?などなど)に、監督がていねいに答えつつも、解釈は観客に委ねたいとして、最後に加えた言葉がとても印象に残りました。

「意図は?目的は?と聞かれて、言葉で説明してしまったら、映画にする意味がなくなってしまうと思う」。

そうそう、スッキリしたいがために、私たちはつい正解を求めてしまうけど、100人が見たら100通りの受け止め方(もちろん好き嫌いも)があっていい。

この監督さん(なんと元・プロスノーボーダーという経歴の持ち主!)は映画に対して誠実な人だなと思いました。


The Innocent
2018
Switzerland, Germany
Director: Simon Jaquemet

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