第23回釜山国際映画祭(11)27 Steps of May













今回の映画祭で見た3本の映画は
いずれもゲスト登壇付きの作品でした。

せっかくの映画祭なので
登壇予定があるものを調べて
選んだわけですが
上映終了後の舞台挨拶や質疑応答を通じて
作り手たちのの思いに触れると
心がふるふると震えることが
たくさんありました。

インドネシア映画『27 Steps of May』は
少女時代に性的暴行を受けて
心を閉ざしてしまった女性が主人公です。

非常に重たいテーマながら
ところどころにフッと笑えるシーンもあり
私にとっては父娘の深い愛の
物語でもありました。

この作品のアフタートークで
とても印象的だったのが
若い女性たちが積極的に
質問をしていたこと。
その内容が、それぞれ鋭くて
そんな見方もあるのかと
ハッとすることもありました。

例えば、暴行事件後8年間
閉じこもりきりだった主人公メイが
部屋の壁に開いた穴をきっかけに
隣家に住むマジシャンと
少しずつ交流を深めていくくだりがあります。

初めは小さかった壁の穴が
どんどん大きくなっていて
ついにメイはその穴をくぐり抜けて
不思議の世界(隣のマジシャンの家)に
足を踏み入れるわけですが
その描写がまるで
母親の胎内から子が生まれ出づるようだと
感想を述べた女性がいました。

ひゃ〜!
それ聞いたとき、私、ザワザワっとした!!

ほかにも、主人公に自身の経験を重ねて
声を詰まらせながら話す人もいて。

映画を見た人たちの、そういう感性が
ゲスト(監督や脚本家)にも響いてか
とても濃厚な質疑応答タイムになっていました。
手元のメモを見ながら覚えている範囲で書くと

・この映画をつくるのはチャレンジだったし
本当に長い時間がかかった。
とりわけ、性暴力のシーンの脚本を書くのは
恐ろしく辛い体験だった。
・事件によって言葉を失ったメイの代わりに
人形や、壁の穴など、彼女の感情や
心の変化を表すメタファーが出てくる。
・タイトルをどうしようか悩んだ。
メイが部屋から外に出ていくまでが
たまたま27歩分だったことと
2+7=9は中国では縁起のいい数字とされるので
そこからタイトルを決めた。
・マジシャンとの出会いでメイは変化していくが
マジックが心理療法に効果的だと言いたかったのではなく
マジシャンの存在は触媒に過ぎない。
再び立ち上がり、前に進もうとするメイの強さ
女性にはそういう強さがあるということを
描きたかった。

…いやー、こういうやりとりって
本当に豊かな体験だなと思うんです。

実は私も質問するぞ!と意気込んで
挙手したんだけど当ててもらえず。
次の作品との入れ替えで
いったんみんな退場したあとに
サインをもらいにいったら
脚本家の女性が覚えていてくれました。
「あなたずっと手を挙げてたでしょ」って(笑)。

タイトルにある「27」の意味を知りたかったけど
別の人が聞いてくれたから大丈夫
メイ役の女優さんの演技が素晴らしかったので
ご本人にぜひ伝えてくださいね、と
お話しすることができました。

はー、幸せ。
3日間、あっという間でしたが
幸せな時間を過ごしました。

27 Steps of May
Indonesia
2018
Director: Ravi BHARWANI
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